※内容はあくまでも個人の主観です。
NITE=製品評価技術基盤機構は、新型コロナウイルスの消毒目的で
利用の広がっている「次亜塩素酸水」について、
現時点では有効性は確認されていないとする中間結果を発表。
人体への安全性を評価する科学的な方法が確立していないことや、
国際的にも消毒液の噴霧は推奨されていない事などを公表しました。
2つの研究機関での検証結果による判断で、
現状としては有効性は確認できなかったと報告しています。
新型コロナウイルスによって様々な除菌グッズが販売されています。
従来のものから新しいものまで様々あり、多くのものが便乗的に
販売していると思わざるをえない側面を持っています。
次亜塩素酸水、電解次亜水、次亜塩素酸ナトリウムについて
それぞれが全く異なる事なども含めて過去の記事で説明しました。
今回は次亜塩素酸水に対する指摘ですので、ネット上でも
多くの情報を見つける事ができるので探してみてください。
元々、空間除菌に関する携帯用の除菌グッズなどについても、
販売業者に対して経済産業省より根拠資料の提出を求めましたが
根拠として認めれる内容のものはなかったようで、
空間除菌の効果を連想させる表現を控えるよう
行政指導が入っているといったニュースは前々から見かけます。
元々、空間除菌という概念は基本的に医療機関にもありません。
空間に対する細菌やウイルスなどへの対策としては、
感染症患者の隔離用として特別な空調によって空気圧を下げる「陰圧室」という病室があります。
部屋の中を減圧する事で扉を開けた際に部屋の外に空気が出ず
圧の高い外から中に流れ込む空気の流れを作る事で
感染患者のいる病室から外に広げないようにできる事が目的です。
空気感染の第1種感染症や結核病床に対応して設置されている病院があります。
空間除菌については、基本的に医療機関などでは
発想そのものが無く加湿が基本対策になります。
加湿は空気中の浮遊物に湿気が付く事で重くなり
下に落ちる事を目的としています。
ウイルスや細菌などにもこれが一番有効である事は
少し詳しく学んでいる者が特に口を揃えておっしゃいます。
では現在の空間除菌という発想に基づいた商品などに
可能性としてどういったリスクがあるのかを少し考えてみます。
まずはじめに、
ウイルスに有効なレベルの消毒液を空間に散布するとどうなるか?
これは想像しやすいと思います。高い確率でむせ混み呼吸しにくくなります。
アルコールのように食品として一緒に食べても大丈夫ではあっても
呼気から直接吸い込めばかなりのダメージがありますから
鼻や喉の粘膜部分にそれを塗布すると考えれば
刺激としても粘膜を痛めてしまいかねない事が想像出来ます。
では次亜塩素酸水では?というところが非常に重要なのです。
なぜ今販売されている次亜塩素酸水に注意喚起がなされているのか?
実は、現在一般的に販売されている次亜塩素酸を謳った商品の中には
濃度などの詳細な調整を行なっていないものが混ざっている可能性が高く
専門的に完全に調整を行なっていればまだしも、基本的な調整のみで
安易に売られているものが出回っていることが原因しています。
過去記事でも紹介した通り、次亜塩素酸水として認められるものは
塩素を含むうえ、酸性である事が基本となります。
この塩素については確かに水道水にも含まれており、食品添加物として
使い方と内容によっては安全と言われるものではあります。
では、安全な水道水レベルの濃度で空中に散布した場合
空間を漂い飛散するウイルスに対しての効果はというと
ウイルスを駆除できる効果は全くないと私は思います。
というよりも水道水を撒いてるだけなので加湿と同じです。
プールなどの塩素についても、
水の容量に対して次亜塩素酸ナトリウムを規定量投入してから
一定以上の時間を経過させる事で塩素を飛ばします。
残留塩素量が安心基準を下回るように管理する必要があります。
また、認可される次亜塩素酸水の基準としては、
濃度とpHの調整が難しく、食品に使用する際には
残留しない事が絶対条件となっています。
ですので、次亜塩素酸水をウイルスを殺せるレベルの濃度にし
空間に散布する事はかなり危険と考えるのが普通で、
体に害のないレベルの濃度で散布するなら水で十分です。
結局は加湿で十分だとなるわけです。
首から下げるタイプの除菌?グッズが人気がありますが、
厳密な効果については根拠はなく、かろうじて効果?と思える
実験結果はあるのですが、人の実生活ではあり得ない条件下です。
密閉した小さな箱に入れて多少の減少が見られる程度で
日常使用を想定されているとはちょっと思えない内容です。
百歩譲って商品本体に多少の効果があったとしても
どの程度の範囲をどの程度の使用期間でどの程度の流風になど、
首から下げているだけでどれ程の効果が期待できるのか
想像してみれば違和感を感じる事ができるかと思います。
もうひとつ、私が無知なだけかもしれませんが、
消毒液を散布する為にはスプレー、加湿するにも加湿器など
周辺に影響を及ぼす、効果を期待できる量の何かを発生させる為には
それなりに噴霧させるなどの動力が必要になると思うので、
あのアイテムでは物理的にも現実的ではないのでは?と感じています。
例えば、芳香剤などは動力がなくても置いておくだけで
部屋中に匂いが充満したりします。
匂いのように空気中に自然に漂うならなんとなくイメージできますが、
匂いの分子レベルの除菌物質を散布している?出てるの?
もしくはその分子レベルで除菌効果があるの?
といったことを冷静に疑問視すると、除菌、殺菌という目的としては、
個人的には全く効果がないか有害であることしか想像できません。
もしも匂い分子のレベルで除菌効果があった場合、
大げさですが人間の受容体レベルに影響する可能性もあるのでは?
そう考えるとやはり安全性検査と根拠となる試験結果は必須です。
少しだけ話を戻します。
ウイルスを駆除できるレベルのなにかしらを空間散布した場合、
口や鼻、目などの人の粘膜に直接的に触れることになります。
呼気として肺などの体内に取り込まれる事も十分あります。
人間の体にはヒトマイクロバイオームという人体に必要な細菌が
約40兆いて、微生物も人体に非常に多く生息しています。
一言で除菌、殺菌というものの、
その除菌や殺菌できるレベルの薬剤や薬品などは
駆除したい細菌やウイルスをわざわざ選んではくれません。
体にとって有用、または必要な細菌や微生物までも殺してしまう事は
十分ありますので、手や物程度の除菌に使用するのは良くても
空間に散布する事で直接粘膜に触れたり、呼気で取り込んだり、
体内に入れてしまって良いわけがないのです。
清掃業などで用いられる次亜塩素酸水についても、
濃度が高い為に噴霧ではなく布に染み込ませ手袋で扱います。
次亜塩素酸の取り扱いに関しては濃度が重要であり
濃度を間違えると危険である事を示唆しています。
次亜塩素酸水については規定そのものが少し曖昧で
解釈によって変わってしまう要素を含んでいながら
殺菌効果はあるものの、人体に無害の状態での使用には
それなりの手順や制限が必要になります。
安易に数値だけを合わせた物が果たして本当に無害なのか、
そして目的の効果は本当にあるのかといった部分がある為
安全性についての指摘がなされ、中には行政指導が入るわけです。
なお、個人的にですが
首から下げるものについては、安全性云々の話には全く関係ありません。
効果についても、
使っておられる方が何かの形で安心を得ているのであれば
それが効果なのではないかなと思います。
結論としまして、
加湿器などに次亜塩素酸水を入れる事が空間除菌につながるのか?
私としましては答えは「ノー」です。
空間を除菌するといった発想そのものがそもそもおかしくて、
換気をしない密閉した無菌室のような空間を作るなら
自宅でも可能といえば可能なのかもしれません。
空気中には無数のウイルスや細菌などが常に漂っていて
外も中もその空気の中で人間は生きています。
そんな換気をすればすぐに充満するものに対して
体のリスクを顧みず、意味のない退治を目的とするよりも、
ウイルス、細菌、花粉までも落としてくれる加湿が一番です。
加湿によって喉の粘膜にも優しくいい事だらけです。
安全性や効果の面だけを見ても水道水で十分です。
結露しない範囲で加湿してください。
杉本