杉の坊のつぶやき

実は知らない健康や医療に関する専門的な情報をお届けできるよう頑張ります!個人のつぶやきもあります

マスクは工夫次第で非常に優秀になる

※内容はあくまでも個人の主観です。

 

新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザや

普通の風邪の予防としていまや常用されるマスクですが、

市販のサージカルマスクは実は工夫次第で非常に効果的な

予防効果を発揮することが論文で発表されています。

 

約9年前の論文で、内容はインフルエンザに関わった

エアロゾルの目を侵入口とする体内侵入に対する

N95マスクとサージカルマスク、ゴーグルの有効性を

実験したデータの論文です。

 

論文内の実験では、

100万コピーRNA/m3相当濃度で、インフルエンザウイルスを含む

粒径5μmのエアロゾルを密封チャンバー内に充満させ、

ボランティアに4種類の装備の組み合わせによる

6つのグループに分かれてもらい、

約20分間曝露させてから鼻腔洗浄液を回収して

鼻腔粘膜に到達したウイルスの量を測定しています。

なお、エアロゾル内のインフルエンザウイルスは

三価の弱毒化生ワクチンのフルミストウイルスを使用しています。

 

6つのグループは、

#1 何もしない

#2 目だけ出し完全防護(目のみを曝露)

#3 サージカルマスクのみ

#4 サージカルマスク+ゴーグル装着

#5 N95マスクのみ

#6 N95マスク+ゴーグル装着

に分かれます。

 

結果としては次の表のようになります。

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それぞれの結果としては、

#1群では鼻腔粘膜に高い到達があることを示しています。

#2群では目の粘膜から鼻腔粘膜への到達は微少であること、

#3群ではサージカルマスクのみでは鼻腔粘膜への到達が多量、

#4群ではゴーグル装着によって鼻腔粘膜への到達が減少、

#5群ではN95マスク単独での高い防護性能が出ています。

#6群ではゴーグルによってさらに到達が減少しています。

 

この結果から考察して、

まず、#2群における目の粘膜からの侵入のみの状態が

N95マスクとゴーグルの併用の結果とほぼ同じである事から

鼻腔粘膜への侵入経路として鼻涙管を介しての

目→鼻腔粘膜→呼吸器への感染リスクは

20分程度の曝露では非常に低いと考えることができます。

ちなみに目の粘膜からの感染については、

・ウイルスの付着した手などで直接触れる

・至近距離での直接的な咳などの飛沫曝露を受ける

といった状況に、例外はありますが限定されるものがほとんどです。

 

次に、#3群での結果によってサージカルマスクは

一般的な装着程度では防御力がとても低いことが伺えます。

 

ただ、#4群のようにゴーグルを併用する事によって

N95マスクに近い結果が出ている事から

その使用の方法と工夫によっては高い防御力が出せると言えます。

この工夫についてですが、

同条件下の実験では目からの感染がほぼ無い状態にもかかわらず

サージカルマスクのみとゴーグル併用では大きな差ができました。

このことについて推察される事は唯一つで、

マスク着用の上からゴーグルを装着する事で

マスクの上部の鼻にかかる部分がゴーグル下部によって抑えられ密着し、

マスク上部の鼻周辺部分の隙間が塞がれた事により

鼻腔への侵入を抑える事ができたと考えることができます。

 

#5群から#6群の変化を見てもこの点は共通していて、

マスクの密着度、隙間への工夫次第でかなりの効果が期待できます。

 

 

実は、日本で使われているサージカルマスクの素材は非常に優秀であり、

素材自体の粒子通過阻止能力はN95マスクに近いといってもいいくらいです。

ただし大前提として製造から販売の工程と表記に偽りが無ければの話です。

 

世間では、マスクでは予防効果が無いといったような話がありますが

実際はあくまでも通常の装着下ではそうだということであって

マスクの素材機能が低い事が理由ではありません。

 

従って、論文にある実験の結果からも

サージカルマスクも使用方法によって

N95マスクに近い予防効果を出せると言う事です。

 

 

ではどのように使用すればよいかについて

国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター 

西村 秀一氏が提案しているものを引用してみます。

1-1)サージカルマスクを眼窩近くまで深く装着し、その上からマスク端を押さえつけるように大きめのゴーグルを装着する。

1-2)マスク上端辺の隙間をなくす意味では、シールド付きサージカルマスクのシールドの上端をキャップがカバーするようにキャップを深めにかぶるのでもよい。

1-3)なるべく大きく、胸まで届くくらいのフェイスシールドを装着する(手作りでも十分。顎までくらいしか来ない短かなフェイスシールドでは、エアボーン粒子の侵入に対しては、効果は限定的かもしれない)。

1-4)サージカルマスクの周囲(あるいは少なくとも上端辺、鼻付近)を、サージカルテープで外側から顔に固定する。少々見栄えは悪いが効果抜群なはずである。

1-5)周囲が顔に密着するような両面テープで内側から固定する(写真)。見栄えは良いが、まだ実践での使用経験がないのでテープで皮膚が荒れることがないか、今のところ注意が必要である。

 

医療従事者向けの提案ですので、

一般の日常では1-1から1-3は現実的ではありませんが

1-4、1-5については参考になる内容だと思います。

 

要は、通常のマスク装着の際に隙間をなくす工夫をすれば

かなりの予防効果が期待できるということです。

ウイルスレベルの侵入が大きく防げるのであれば

花粉症の方にも役立つのではないでしょうか。

 

個人的な工夫の提案としては、

マスクの内側(顔に触れる面)の端4辺に

スポンジの隙間テープ様のものを細長く接着するという方法もあります。

 

少し高価なマスクに、メガネの曇らないためのスポンジのような

クッションが鼻辺に付けられたものがあります。

あのような感じで、

フィットマスクのようにスポンジのような材質のものか、

いっそ使用後のフィットマスクを加工して取り付けてみるのも

一つの工夫かもしれません。

 

ゴーグル使用の例からも、

鼻周辺の隙間を塞ぐ工夫をすることが

高い予防効果を狙えるヒントだということですね。

 

まだしばらくは予防の意識が必要な状況が続きます。

暑くなってきてマスクも不快になってはきますが

色々工夫して、効果的な予防対策をお願いします。

 

 

杉本