※内容はあくまでも個人の主観です。
現在インフルエンザと呼ばれる、
スペイン風邪の流行推移をもとに
新型コロナウイルスの第2波に
警戒すべきとの意見が出ています。
日系メディカル「不可避のパンデミック第2波に備えよ」
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/cvdprem/lecture/komamura/202004/565240.htmlより引用しています。(全文見るにはログインが必要です)
1918 flu pandemic(スペイン風邪ともいわれる)は、1918年1月から1920年12月までに世界中で5億人が感染したともいわれるインフルエンザの世界的大流行として有名です。1918年春、秋、冬(1919年春という記載もあります)の、全部で3回の流行の波があったことが知られています。米疾病対策センター(CDC)のホームページには、米国で記録された死亡者数が3つの山を作っている図が掲出されています(図1)[1]。
本文引用はここまでですが
全文の中ではスペイン風邪における死亡者推移の山が
3回あることに触れ、アメリカと日本での状況比較を行っています。
日本の流行状況は上記の表1のとおりで、
アメリカでは図1のように第2波での死亡者が最も多いのに対して
日本では初回の感染が最も多くなっています。
データサイエンティストの佐藤彰洋氏(横浜市立大学大学院
データサイエンス研究科教授)は、COVID-19情報を発信しておられます。
東京都の感染状況が今後どうなるのか、
数理モデルでシミュレートした結果が多数発表されており、
その中には今喧伝されている接触の8割抑制のシミュレーションもあります。
他の都市では有効なのかもしれませんが、
図3で分かるように、東京では感染者の再増加を許してしまうようです[4]。
接触を98%抑制した場合のシミュレートした場合に
はじめて効果が出るといった結果も出ています。
最近のナショナルジオグラフィック誌に、
1918 flu pandemic当時の米国各都市の対応と
死亡者数の推移がグラフ化されていました[5]。
厳しい社会的距離戦略で一旦は沈静化した後に、
緩和するタイミングが早すぎて、
長い第2波を経験せざるを得なかった都市が紹介されています。
また、疫学を学ぶ学生さんの検討でも、
30日間80%の外出制限措置の終了後はすぐに患者数が増加してしまい、
結局は外出制限が繰り返されるという結果になっています[6]。
世界的に有名なインペリアル・カレッジ・ロンドンの
ニール・ファーガソン氏のシミュレーションが、
最近のNature誌に掲載されています(図5)[7]。
この図の示すところは、社会的距離戦略により、
あるいは社会的距離戦略+学校閉鎖により、
それらが継続される間の患者数は抑制されるけれども
止めたとたんに、再増加という第2波に襲われるということです。
また、4月14日にハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のステファン・キスラー氏らは、シミュレーションによる今後の具体的な見通しをScience誌に発表しました(図6)[10]。
図6 キスラー氏らのシミュレーション結果
黒曲線で示す患者数(左目盛)が一定数(横破線)を超えたら、
青色の影で示した期間、社会的距離戦略を発動する。
赤曲線は重症者数(右目盛)、黒実線は現在の米国の重症者の収容能力。
季節性変化を考慮したモデル[10]。
ここでも、
社会的距離戦略を解除すれば
すぐに次の波が来ることが確認されています。
患者数のピークが救急医療態勢の能力を超えないように
断続的に社会的距離戦略を行うと、
集団免疫を獲得するには2022年までかかるとの内容です。
ただし、新規薬剤やワクチンが開発されれば、
この期間は短縮される可能性があるとのことです。
中国の研究者は既に、
第2波に注意すべきとLancet誌で警告しています[8, 9]。
都市封鎖などの感染伝播の強力な抑制を中止する場合には、
第2波が予想されるので、
医療政策の決定には再生産数と死亡率の
緻密な追跡が必須であると説いています。
一体、この第2波を消し去るものは何か。
それは感染者の緻密な追跡による
早期診断・治療や早期のワクチン接種ではないか、
との示唆を散見しました。
ただ、新規ウイルス薬もワクチンも、
我々はまだ持っていません。
当面は、都市封鎖や強力な外出制限を
継続するほかに手段はなさそうです。
本文より多くの文言を引用しましたが、
やはり感染減少傾向をそのまま収束と捉えず
確実に収束が断言できる日がくるまでは
油断できません。
確かに自粛など身体的な負担はありますが
今一度、家族の命や自分の将来と比べてみて
本当に天秤にかけるものなのかを
考えてみるべきだと思います。
杉本
【参考文献】
[1] 1918 Pandemic Influenza: Three Waves.
https://www.cdc.gov/flu/pandemic-resources/1918-commemoration/three-waves.htm
[2] 池田一男他、日本におけるスペイン風邪の精密分析、東京都健康安全研究センター研究年報 2006;56:369-374.
http://www.tokyo-eiken.go.jp/sage/sage2005/
[3] He D, et al. Inferring the causes of the three waves of the 1918 influenza pandemic in England and Wales. Proc Biol Sci. 2013;280:20131345. doi: 10.1098/rspb.2013.1345.
[4] 佐藤彰洋、COVID-19情報共有―COVID19-Information Sharing
https://www.fttsus.jp/covinfo/
[5] Strochlic N, et al. How some cities ‘flattened the curve’ during the 1918 flu pandemic.
https://www.nationalgeographic.com/history/2020/03/how-cities-flattened-curve-1918-spanish-flu-pandemic-coronavirus/
[6] Mangoose cat、モデリングから考える長期的なCOVID-19戦略
https://medium.com/@mmcat/モデリングから考える長期的なcovid-19戦略-fe4ed42f6698
[7] Adam D. Special report: The simulations driving the world’s response to COVID-19. https://www.nature.com/articles/d41586-020-01003-6
[8] Leung K, et al. First-wave COVID-19 transmissibility and severity in China outside Hubei after control measures, and second-wave scenario planning: a modelling impact assessment. Lancet. 2020 Apr 8. doi: 10.1016/S0140-6736(20)30746-7.
[9] Xu S, et al. Beware of the second wave of COVID-19. Lancet. 2020 Apr 8. doi: 10.1016/S0140-6736(20)30845-X.
[10] Kissler SM, et al. Projecting the transmission dynamics of SARS-CoV-2 through the postpandemic period. Science. 2020 Apr 14. doi: 10.1126/science.abb5793.