※内容はあくまでも個人の主観です。
ブログの趣旨に戻り少しだけ真面目に書きます。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による
感染症(COVID-19)は、
世界的に広がり、各国では爆発的な増加をしたりと
日本でも感染拡大への懸念が消えていません。
色々な治療薬への期待がきこえてくるなか
ファビピラビル(アビガン)や、レムデシビルなど
COVID-19に対する効果が期待されるものが
注目され、早期の薬事承認を目指して治験が進められています。
SARSーCoVー2の感染様式や重症化のメカニズムなどについて
ファビピラビル(アビガン)の開発にも携わった
千里金蘭大学(大阪府吹田市)副学長、富山大学(富山県富山市)
名誉教授の白木公康氏(専門 臨床ウイルス学)の意見を
参考に紹介してみます。
出来る限り原文を引用していますが
原文をもとに表現や記述を変え文章を構成していますので
誤った部分などがありましたら申し訳ありません。
まず、COVID-19の重症化について
COVID-19の感染はウイルス性の間質性肺炎を起こすので
肺炎が生じていれば細菌性肺炎と同じ治療の考え方をするため
抗ウイルス薬を用いて治療すべきで、放置すれば当然重症化する。
ウイルス感染症の症状には、ウイルス感染細胞内のウイルスRNA
に対する自然免疫によってサイトカインが放出され、
インフルエンザのように発熱などの全身症状を誘発するものと、
水痘(みずぼうそう)や麻疹(はしか)のように比較的潜伏期が長く
ウイルス感染細胞やウイルス抗原に対する免疫が誘導され
細胞性免疫や液性免疫によって細胞傷害作用が誘導される
免疫応答によって発症するものがあります。
COVID-19肺炎では、
サイトカインによる炎症と免疫応答による炎症が
組織障害を起こすと考えられています。
現在、重篤化したケースにおける
COVID-19の治療薬候補として、吸入ステロイドや
抗インターロイキン6受容体抗体である
トシリズマブ(アクテムラ)やサリルマブ(ケブザラ)
が挙がっているのも、サイトカイン産生や過剰に活性化した
免疫応答を抑えることが目的になっています。
COVID-19による重症肺炎が起こった場合
その薬物療法は対症療法としての抗炎症薬や抗サイトカイン療法に
なるのだと思います。
ファビピラビル(アビガン)はインフルエンザ治療薬として
承認されており、レムデシビルはエボラ出血熱を対象として
開発された治療薬で、いずれも核酸アナログであり、
ウイルスRNAの複製の際に競合的に取り込まれることで
RNAの複製が阻害され、ウイルスの増殖を抑える作用があります。
核酸アナログとして抗ウイルス活性を持つため
いくつかのRNAウイルスに効果があることが示されていて
SARS-CoVー2に対しても効果が期待できるとして
進められています。
核酸アナログ製剤なので、
ウイルスの細胞への新規感染を抑制するという点では
有効ですが、ウイルスにすでに感染している細胞への
効果は高くなく、ウイルスRNAをこれから複製しようと
しているならば、核酸アナログによって競合阻害活性で
ウイルスRNAは増えませんが、既感染細胞では大量の
RNAを増殖するための大量のヌクレオチドの供給体制が
整っているので、少しばかり核酸アナログを加えても
RNAの複製は阻害されません。
インフルエンザで抗インフルエンザウイルス薬を服用して
新たな感染活動を停止しても、解熱自体には1日~2日
かかるのは、既感染細胞からのサイトカイン産生が
継続しているからです。
したがって、
ファビピラビル(アビガン)もレムデシビルも
基本は早期に使うべき薬剤です。
COVID-19の増殖時間は6時間です。
発症5日~6日後に来院患者の診察時に撮影したCTで
軽症肺炎が認められた場合、そこから1日経過すると
ウイルスの増殖サイクルは4回あることになります。
軽症肺炎患者の病勢が止まるのか悪化するのかを
推定するためにもいつ2回目のCTを実施するべきかを
検討し、抗ウイルス薬治療をするか経過観察するかを
選択判断できるのが重要とおもわれます。
専門的過ぎてかなりはしょりましたが
めちゃくちゃ簡単にいうと
要は、ウイルスの増殖に必要な働きや物質などの
動きを抑制する役割をする薬だという理解が一番近いかと。
今後期待されるファビピラビル(アビガン)、レムデシビルですが
臨床上はSARS-CoVー2、COVID-19にたいして
現時点ではどれほど効果的なのかは、
海外からの報告などを基にした
人道的使用での実効果データしかありません。
今後においての副反応などについては
様々な声がありますが
抗インフルエンザ薬としての承認もありますので
今の危機的状況からは細心の注意を払いながらも
期待するばかりです。
杉本