杉の坊のつぶやき

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どう考えるか…追記

※内容はあくまでも個人の主観です。

 
前回の記事で取り上げた岡山大学の件での追記です。
 
今回の岡山大学の一件は
インターネット上でも様々なニュースとして一部で注目されています。
一部というのは、今回の件でのマスコミの反応がイマイチなのか
ネット上でのニュースではそこそことりあげられているものの
テレビなどのメディアではほとんどのとりあげられていません。
 
ご存知の方も多いと思いますが、
世界有数の製薬会社「ノバルティスファーマ」が、治療薬などの臨床研究にて
数々の不正問題を起こし、すでに降圧剤バルサルタン(商品名:ディオバン)については
2014年に厚生労働省薬事法違反にて刑事告発し、同社はホームページで謝罪したが、
続いて慢性骨髄性白血病の治療薬を用いた臨床研究でも不正の疑いが発覚。
同社は社外調査委員会を設置し真相解明に努めることを明らかにしました。
しかし、ノバルティスファーマの事件は、ノバルティスファーマだけの問題ではない事は
医薬業界の関係者なら誰でも知っていることです。
 
薬効を謳い薬の売り上げを伸ばすために製薬会社が大学や研究者をとりこんで
臨床データを改ざんしたり論文を都合のいいように捏造することが繰り返されています。
 
こういった構図を根本から改善するには、製薬業界や大学などの研究機関をはじめ
利益産業化した社会構造そのものの改善が必要です。
また、薬に対する正しい知識を、もっと日常的に理解できるよう
基本的な情報提供と同時に教育の観点からも知識として習得できるようにしなければいけません。
 
これまでに過去にも、多くの大学関係者や医学部、医療従事者によって内部告発はありましたが、その都度揉み消しとも言える不遇によって扱われてきたことは、こういった事件をきっかけに気づいていただけることではないかと思います。
 
岡山大学の件は、薬学部長と副薬学部長クラスの教授による告発で、
このクラスの方は本来は告発される側の立場といったイメージなのですが
それがかえって説得力を感じさせる告発になっていることが注目の点です。
 
基本的に研究者は「人の研究に口を挟むべきではない」といった心理を持ち合わせています。
こういった研究者心理が告発の妨げにもなりえます。
また、診療科教授を頂点とした医局制度下にある研究者のピラミッドでは
異論を唱えたり指摘を挟みにくくもあります。
 
今回の告発も、単純な不正告発ではなく助走期間を経ての告発であったようで、
告発に至るまでに学部長らが自分たちで十分調べていたようです。
学部長と副学部長から不正調査の報告書を提出された岡山大学学長は
医学部教授であり病院長ですが、両名からの報告に対して不正の封印を選択、
それが今回の件につながっているようです。
 
不正論文の横行を危惧した学部長らが、
先述した他人の研究にケチを付けないという不文律を犯し、論文を精査、
そこで見つけたのが28本の不正論文。臨床データの改ざんが常態化していることを
学部長らが見つけ報告したが、学長(大学)側の対応は上記の通りということです。
 
製薬会社が、奨学金、共同研究費、学術助成金、講演謝礼などで
大学、研究者、医療機関などに様々な形で便宜を図る見返りに
製薬会社にとって都合の良い臨床結果が渡され、その罪は共犯として
両者の中で隠蔽されるといった構図が存在します。
 
今回の件から表面化させ改善を期待することは残念ながらできません。
今回の件はあくまでも業界における異分子による反乱であって
各研究者などに同意を求めることは難しいからです。
 
告発した教授は大学院副研究科長を解かれたばかりか、
他の告発メンバーも含め突然の「ハラスメント疑惑」をかけられ
ハラスメント防止委員会による圧力と学内での攻撃の的になりました。
 
告発に当たった教授は学外でも戦う覚悟を固め、地位確認や公務員職権濫用の訴えを起こし
民事、刑事の両面から大学側と争う姿勢を見せています。
しかしながら法廷闘争には時間もお金もかかります。
今後、職を解かれた個人で戦って行くのは本当に厳しい事です。
 
告発した教授は言います。
「研究者のモラルに委ねる段階ではない。臨床研究や臨床試験に問題はないか
   論文に不正はないか、基礎となるデータに改ざんはないか、そうした問題を調べる
   第三者機関を文科省厚労省がつくり、随時チェックすべきだと思います。」
 
ノバルティスファーマの事件をきっかけに構造的な問題はすでに明らかになり、
解決の道筋も見えたかに思えました。しかしながら動くべき所が動かないのです。
 
私自身も感じるのは、
臨床データという社会的にも重要な存在に対して、基本的な第三チェック機能が存在していない事がそもそもおかしな事で、本来ならば精査に精査を重ねてさらに実証しても足りないほどの重要な内容なはずです。特に医療といった絶対的不可欠なポジションにおいてチェック機能が独裁的な環境を放置している事は行政の重大な過失であると思います。
また、製薬会社が販売と売り上げ、利益を最大の目的としているところにも違和感を感じるのはおかしなことでしょうか?
 
私も、
健康に関わる仕事に従事していますので他人事ではないのですが、
人の健康や生活に欠かせない分野で働く以上、守らなければいけないことは
通常の仕事よりも責任重大だと考えています。
確かに自分の生活あっての仕事ではありますが、人の弱みをお金に変えようとは思えません。
医療や健康に関わる分野はまさにその部分と向き合わなければいけないはずで、
綺麗事と言われるかもしれませんが病気や体調に苦しむ方々の役に立てるよう努力した結果として
あとから私たち従事者の生活がついてくるはずなのです。
 
医療とは、病気に苦しむ人達を対象にしているので、
治療の方法も薬の効き目も正直なものであるのが当たり前で
患者も国民もそれを信じています。
しかし実際には効き目や効果を偽って、信じる患者からお金を巻き上げるような
そんな方法が横行しているのも現実問題として起こっています。
論文や臨床データの改ざん、不正、というのはまさにそういったことなのです。
 
今回の岡山大学の件の真相については定かではありませんが、
こういった事をきっかけにもっと深く考える機会が増えてくれる事を
私は願います。
 
 
杉本